その絵は、彼の帰りを待っていた。『想う事は簡単で 想われる事は怖かった』売れない画家 マッジは元来の臆病さと自信のなさから孤独で貧しい暮らしを送っていた。助けてくれる身内もなく、唯一頼れる師匠には面目が立たないと連絡をとれず、いよいよ困窮を極めた頃に師匠のアトリエが全焼したという報せを受ける。脳裏に渦巻くのは、掴めなかった幸福たちの記憶。優しい師匠。初恋の少女。そして師匠へと描き残した一枚の絵。過ぎ去った幸福と抱えきれない後悔を胸に、マッジは焼け落ちたアトリエへ向かう。帰りを待っている『想い』に引き寄せられるように……。全39ページ