怪異――それは常世と隠世(かくりよ)を結ぶ奇妙な体験。怪異を蒐集していると時に変わった職業に行き当たることがある。池に落ちたボールを拾うゴルフボールダイバー、弱った木々を治療する樹木医、伝書鳩を育てる伝書鳩ブリーダー……。そうした特殊な職業についている人々が体験する怪異は、一味も二味も変わっていることが多い。鮨職人が目撃した謎の「のっぺらぼう」の正体。死の香りを嗅ぎ分けるフレーバリスト。シューフィッターのもとにやってきた不気味なフジツボ男。路線バス運転手が遭遇したもの言わぬ乗客たち……。「私の体験をどうか最後まで聞いてください……」隠世はあなたのすぐ傍にも広がっている。特異な余韻を残す〈実話〉怪談アンソロジー。