鬼神の一族を救えるのは、贄の一族だけ。これは、鬼神と呼ばれる神がいた村で行われる、現代へと続く因習と信仰の物語。──199×年。交通事故で両親を亡くし、天涯孤独となった主人公。養子として引き取られていた彼女の受け皿になりたい者はいない。しかし、そんな中ある中年男が名乗りをあげる。怪しい中年男に手を引かれる最中、それを止めたのは布袍(ふほう)を着た長身の男だった。「…こんにちは」人口1000人程度の山村で住職をしている百鬼京丞(なきり きょうすけ)は、傷ついた主人公の心に寄り添い、村に温かく迎え入れてくれた。──だが、夜毎 百鬼は主人公の部屋に訪れる。人間には到底あるはずもない、「鬼」のような角を宿して─。彼は主人公に何をするわけでもなく、ただ一人精を発していくだけ。目を開けるかどうか、どうしてこんなことをするのか。何故、そんな姿をしているのか。けれど、言葉を発する前に寝たふりをしていることがバレてしまい──そして、百鬼は言った。「……起きていますね、──さん」■鬼神村遠い昔、鬼神と呼ばれる者たちが作った村。今でも鬼神信仰は続いており、鬼神の子孫とされる者たちは村人から尊ばれ、村を守るための存在だと思われている。いつのまにか贄を捧げる生贄信仰は消えていたようだが…?※本作は堀田阿伴の個人誌作品の電子書籍版となります。【29ページ】