私はその頃、百鬼園氏の家の書生であり、学生であり、執事であり、有力な家族の一員であった――自宅へ来る高利貸に応対し、漱石の軸を夫人に買い取ってもらうよう算段をし、佐藤春夫に短篇の紹介を頼む際に同行する。寝食を共にした書生が見た家庭での内田百間。自宅と別宅の二重生活の様子が綴られる。
巻末に百間の関連エッセイ・短篇を収録。
(目次より)
I
ドイツ語の歌/代返/内田先生の時間/ゾルフ大使/青春の日/一分停車/晩飯/撫箏の図に題す/卒業論文/腕時計/学期末試験
II
『冥途』縁起/砂利場の大将/二本のパイプ/退職金/軸
III
大検校の軒/小びとのおじさん
内田百間作品
予科時代/ゾルフ大使/冥途/大尉殺し/山高帽子