あらすじ当たり前のことを当たり前に詠むひとつぶの雨はひとすじに結ばれて、やがておおきな水のかたまりとなる。「山はおおきな水のかたまり」祖母から教えられた言葉は、自然観と生活信条の礎となった。雨や風や太陽や水、なにより清新な森の匂い――。身辺のものは、みな愛おしく、いつしか当たり前のことを当たり前に詠めるようになった。俳句には退屈がない。「山桜山のさくらと咲き並ぶ」「桜どき足もとにまでものの影」「厭戦のかたちの葎雨しとしと」「透明な一品をもて夏の膳」