桐尾琴穂が生まれ育ったのは、とある地方の田舎町。
この地域では衣食住から仕事先、何から何まで地主である羽木籐家に頼り生活している住民ばかりという、独特の風習がいくつも残る閉鎖的な環境だった。
そんな、地元で絶対的な力を持つ羽木籐家の御曹司――聖惟の婚約者だった琴穂は、ある時この土地での生活が歪であることに気づいてしまう。
そして七年前、『二十五歳の誕生日にはかならず仕事を辞めること』という約束を聖惟と交わし、琴穂は外の世界を学ぶため地元を離れることに。
とうとう迎えた二十五歳の誕生日。
七年ぶりに再会した聖惟は淡々としていて、相変わらず琴穂には興味がないように見えたのだが……!?
「今日、僕がなにもしないと思った?」
ついに始まってしまった羽木籐家の嫁としての生活。
都会に出た琴穂は変わり者だと冷たい目を向けられ、実の母でさえ琴穂の味方をしてくれない。
七年もの自由をくれた聖惟のためにも、琴穂は羽木籐家の嫁としてふさわしくなろうと奮闘するが――……。