――半導体業界「キーマン中のキーマン」が提言する「日本再生戦略」。日本経済がしくじり体質から脱却するかどうかは「最先端半導体」にかかっている!――
世界ではいま、半導体がかつてないほど“熱い”。
1つは、新型コロナウイルスによって半導体の製造と供給が大きく滞り、世界経済に大きな影響を与えたこと。もう1つは、半導体をめぐる米中関係の緊張の高まりだ。
いま世界中で、半導体「国産化」の動きが起きている。
私はJSRで2023年に名誉会長を退任するまで、40年超にわたって半導体業界を現場の視点からつぶさに見てきた。その経験から、「最先端半導体の開発と製造を日本国内で再び行うべきだ」と考えている。
いまや世界を牛耳るGAFAMは大きく成長し、次の波、AIを素早く取り入れることで強大なパワーを手にしてきた。それによって本拠地を置く米国が世界の覇権を握ってきた。
支えたのは「コンピューテーション(計算基盤)」であり、基盤となる半導体にほかならない。半導体は企業の力の元であり、国の力を支える基幹産業なのだ。半導体の復活なくして、日本の未来が明るくなることはない。
ここにきて「日の丸半導体、復活か」と思われる動きが相次いでいる。TSMCによる熊本新工場の建設、先端半導体の国産化に向けた新会社Rapidus(ラピダス)の設立――。
ただ、こうした「半導体の喧騒」を冷めた目で見ている人も多い。
「失われた30年の間に、技術力も技術者もなくなった。工場だけで、簡単につくれるはずがない」
こういった批判の声は、一理ある意見もあるが、日本は国産化へまっしぐらに突き進むべきだという私の考えはいささかも揺るがない。そこには勝算があるからだ。(「はじめに」より抜粋)