政治には関与せず無気力。日々、絵を描き芝居を観て祝宴に列し、女性とみれば女優に修道女、宮廷の侍女から街の娼婦まで口説かずにはいられない。そんな愛欲に溺れる己に苦しみ、罪悪感から神にすがっては懺悔する…。
華やかなりしスペイン帝国をみるみるうちに凋落の一途へと導いた、国王フェリペ4世(1605-65 在位 1621-65)。
悪名高き意志薄弱な王は、いかに誕生したのか。その放埒な生活と晩年の不如意な人生と死を第1部に。凋落するスペイン帝国の実態を第2部に構成。様々な噂話やエピソードかスペイン・ハプスブルクの影を活写する。
目次
はじめに
第一部
第1章 スペイン国王フェリペ四世、誕生
王子の誕生と教育/王子の理想像/結婚、そして王位継承へ/寵臣オリバーレスと王家の人々
第2章 浮気な国王の放埒な宮廷生活
祝宴につぐ祝宴/王宮での日々/芝居を楽しむ/十七世紀式闘牛、マヨール広場にて/《狩猟をするフェリペ四世》/宮廷式求愛/宮廷画家ベラスケスと絵画コレクター/宮廷のおどけ者たち
第3章 フェリペ四世の告白できない告白
スキャンダルの始まり/女優〈ラ・カルデローナ〉との恋の戯れ/女子修道院に忍び込む/賢夫人イサベル王/ライバルは「ドン・フアン」/伯爵暗殺
第4章スペイン帝国の危機と王家の不幸
マントヴァ継承戦争とネーデルランド/カタルーニャとポルトガルの反乱/寵臣オリバーレスの失脚/権力の後継者ルイス・メンデス・デ・アーロ/イサベル王妃とバルタサール・カルロスの死/跡継ぎが生まれない!/「大地の息子」フアン・ホセ・アウストリア以後
第5章 世俗を逃れて/恩寵を求めて
神秘家マリア・コロネル/「余に天罰を!」/魂の国からのアドバイス
第6章 国王の晩年と黄昏れゆくスペイン
苦悩の晩年と国王の死/ハプスブルク家からブルボン家へ
第二部
17世紀スペインへの望遠鏡(テレスコープ)
ハプルブルク・スペインのかたち/人々の生活とカトリック教会/異端審問と「アウト・デ・フェ」/黄金世紀、百花繚乱
《注》
あとがき
主要参考文献
人名索引
学術文庫版あとがき
本書は、『浮気な国王フェリペ四世の宮廷生活』(岩波書店 2003年3月刊)を改題、加筆・一部修正したものです。