現代の働き手はその忙しさを増しており、いまや多忙は一種のステータスシンボルともいえる。企業社会では表面的には多忙を美徳とすることはなくなっているものの、いまだに多くの企業が猛烈な働きぶりを示す従業員に報償や昇進機会を与えているのが現実だ。しかし、従業員に過大な負荷をかけることは生産性や効率の面ではマイナスであり、従業員エンゲージメントを低下させ、その健康にも悪影響がある。そのため、マネジャー層にはこうした多忙を是とする文化を再考しようという動きもある。筆者はこれまでの学術研究や企業へのアドバイス経験から、多忙をよしとする文化がなぜ根強く残っているのかを分析したのち、実践的な解決策を提示する。
*『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(2023年8月号)』に掲載された記事を電子書籍化したものです。