ジャンルの始祖・清張にとって、「社会派推理」とは何だったのか?
『或る「小倉日記」伝』(1952)で芥川賞を受賞し、『点と線』(1958)でブレイク、『小説帝銀事件』(1959)で現実の事件に取り組み、『日本の黒い霧』(1960)でノンフィクションへ――と、松本清張はデビュー以来、瞬く間に新たな領域を開拓し、のちに「社会派推理の祖」と称された。
1950~60年代の日本を背景に、本格派/社会派、純文学/エンターテインメント、フィクション/ノンフィクション……といった複数のジャンルの枠を超えて成立した「社会派推理」の実像は、清張没後30年を経てなお、いまだ広く知られていない。
本書では、その「社会派推理」をテーマに、初書籍化となる中篇(表題作)はじめ、これまで単著・全集未収録だった貴重な小説・トーク・エッセイを中心にセレクトした。
本人およびその同時代作家たちによる証言を通して、「社会派推理」が求められた原点、そしてその展開の軌跡と可能性の中心をさぐる。
【目次】
[小説]
閉じた海(1973)
よごれた虹(1962)
雨(1966)
[対談・座談]
私小説と本格小説――対談・平野謙(1962)
推理小説の作者と読者――座談・高木彬光/水沢周(1962)
作家と批評家――対談・権田萬治(1973)
[エッセイ・インタビュー]
広津和郎(1968)
石川達三(1985)
白の謀略(1977)
世界が激動しても、人間は変わらないんだよ――生前最後のインタビュー(1992)
解説・藤井淑禎