金欠の明屋敷番、深謀遠慮に巻き込まれる!
あわや、白河藩主で老中首座・松平越中守定信の命を救った、貧乏旗本の内藤三左衛門。
公儀転覆の陰謀を紙一重で防いだ功により、めでたく明屋敷番を拝命、本所から浅草へ屋敷替えとなった。
とはいえ、祖父・次郎右衛門も小者・嘉平も「出世は務め」の一点張りで、これまで通り三左を当主扱いしない。せっかく加増もされたというのに、だ。
しかも、相変わらず財布の紐をふたりに抑えられているため、懐はすっからかん。
今日も今日とて、腹をすかして町中へ出てみれば、折よく痩せた男が大男に長槍を向けられているではないか。
喧嘩の仲裁を飯の種に暮らしている三左は、これ幸いと早速割って入って、痩せた男の下川草助を助け出す。
幾日後、その下川がなんと、夜中の内藤邸に忍び込んできた。話を聞けば、元々はここに住んでいたという。
だが、一年前、作事方庭作を務めていた御家人の父親が下城の途中、背中からのひと太刀で斬り殺され、家名断絶の憂き目にあったという。何の因縁なのか?
三左が空きっ腹をなだめながら事件を調べはじめると、思いもよらぬ方へと事態が転んでいき……。
スカッと心が晴れる痛快長編時代小説!