この巻には「社会と世界」を共通の特徴としている15の章を三つに区分して収める。「一方の利益は他方の損だ」「高い身分の具合のわるさについて」など人間関係、社会体制の現況からの総合的な省察をおこない、「習慣について……」「人食い人たちについて」では読者の先入見を揺さぶる。末尾に収録の「むなしさについて」は、思考と表現の展開の究極を示したものと言ってよく、論点は、家政、旅行、病気、死、内戦、外国、パリ、ローマ、などと飛躍し、読者を相手に座談、歓談を楽しんでいるかとも思われ、「エセー」の神髄がうかがわれる。