私は男? それとも女? たくさんの涙のぶんだけ、今の私がある――家族全員が耳が聞こえないという環境に生まれ、いわれない同情、イジメ、偏見を向けられながらも、持ち前のファイトで乗り切り、さらに、男から女に生まれ変わった一人のろう者が明かす、壮絶だが、思わず笑ってしまう青春模様。
●この本を書きはじめてみると、自分のプライバシーをさらけ出すことに抵抗が出てきました。耳が聞こえないため、また、体は男であるために差別されたこと、傷つけられたこと、そして、男の人に振られたこと、セックスのこと……。それは、癒えかけていた傷をまた掘り起こすような作業でした。(中略)
ところが、何週間かたって、印刷所から校正紙が上がってきました。その校正紙を読んでいたときのことです。
「やっぱり、みんなに謝って、この本を出さないことにしてもらおう……」突然、そんな気持ちになってしまったのです。この本を出すことがきっかけで自分やまわりがどう変わっていくのか、そんな未来に対する不安からでした。
「私、とんでもないことをしているんじゃないだろうか……」――「おわりに」より