おれには、はなから母親がいない、そう考えるのだ――売り出し中の料理屋<元喜世>に突然現れた「平蔵の母」きえ。その真偽は、平蔵の真意は。池波正太郎没後なお多くの支持を集める『鬼平犯科帳』。父で挿絵家・中一弥氏が「オール読物」で挿絵を描いていた縁と、長年の愛読者だった著者が、「鬼平」へのオマージュをこめて、切れ味鋭く長谷川平蔵を蘇らせたシリーズ最新の第4作。収録作品は表題作の他、「せせりの辨介」「旧恩」「陰徳」「深川油堀」「かわほりお仙」の全6作。※この電子書籍は2020年1月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。