『点滅するものの革命』で第65回群像新人文学賞を受賞した新鋭が描く、注目の受賞第一作。
大学のお笑いサークルに所属するわたしたちは、夏の10日間、東北地方をめぐる公演合宿ツアーに出発した。
各紙文芸時評で絶賛!夢と現の狭間で移りゆく思考と感情の泡立ち、分岐する記憶をとらえる奇跡の文体。
毎年、大学の夏休みに行われるお笑いサークルの合宿では、行き先ごとに分かれ、老人ホームや病院でコントや大喜利を披露する。東北班のメンバーは、3年の朝倉とミミ、2年で班長の三井、1年のユカリと杉崎。レンタカーで出発したわたしたちは初日の目的地・福島へ向かうが、旅の予定は早々に乱れて……。
・ユカリ 「先輩たちと比べて、ふだんのあたしがしているやりとりときたら、どれだけ鈍臭いことだろう?」
・三井 「慣れてしまえばイジられキャラも悪くない。イジられることにも技術がいるのだ。」
・ミミ 「楽しい楽しい。ずっとこんなことして生きていきたい。」
・杉崎 「どうせ明日には忘れてしまうことだ。二度と会わない人を思いだすほど無意味なことはない。」
・朝倉 「どうしても思いだせない。どこへ行ってなにを見たのか。おれはとりかえしのつかないことをしてしまったんじゃないのか。」