冗談だよ、ばか。何もいらない。おまえがいればこれまで「ちゃんとした恋愛」をしてこなかった朱鷺。夜の神社で一目惚れをした相手は、二十年無職の肩書き・元愛人の男で…。三十八歳にして、やるせないほどの恋に落ちてしまった。友人との飲み会帰りの朱鷺が、たまたま立ち寄った神社。そこから見えるマンションのベランダに、酒を呷る美しい男・瑠璃はいた。朱鷺は在宅勤務のシステムエンジニアで、そこそこ堅実な人生を送っている。燃えるような恋の経験はない。それでも勢いのまま瑠璃に告白をするが、彼は二十年無職で失恋したばかりだから、と朱鷺を振り、その後は何度言い寄っても思わせぶりに躱されて――。斎賀時人・装画