二〇〇九年における日本のGDPは、ほぼ五兆ドル。そして、中国・香港向けの輸出額は約一千四百十五億ドルで、対GDP比で二・七九%。
中国への輸出は日本のGDPの三%にも満たないのが現実である。
また、中国・香港からの輸入額は約一千二百三十六億ドルで、対GDP比二・四四%となっている。
したがって、日中貿易の総額は、二千六百五十一億ドルで、約百七十九億ドルが日本の貿易黒字となる。
ところで、輸出はGDPの加算項目だが、輸入は控除項目になる。
つまり、輸入金額分がGDPから差し引かれ、GDPに算入されるのは、貿易総額ではなく、「貿易黒字」になる。
よって、万が一、中国・香港との貿易が途絶した場合、日本経済の「フロー」であるGDPは、約〇・三五%減少するだけのことである。
はたして、この程度の規模で、「日中貿易が消滅すると、日本経済は壊滅的な打撃をうける!」などといえるのか、
また、こうした主張こそが、対中関係における政治判断の過ちを生む要因になる、というのが本書の主張である。