65歳の若松一城は幸せを実感した。娘の愛と15年ぶりに再会したのだ。別れた妻の死を報告に来た娘は21歳の家庭的な女になっていた。面長の目鼻立ちのはっきりした顔だちで、長い髪は明るい色に染められ、伸ばした爪をピンク色に塗っている。時折見せる笑顔は色気と愛らしさがないまぜになっていた。最初は1日だけ泊まっていくと言っていた愛に、一城は正月まで一緒に過ごそうと提案。久しぶりに親子水入らずの時間を得た。しかし、愛には男の影がちらつき、ある日、自宅に若い男を招き入れ、隠れて愛し合っている姿を目撃してしまう。翌日、一城は愛を土蔵に連れていく。そこで愛は張り型を見つけ、異様な興味を持った。江戸時代の名工が作った可能性があるらしい。「本物かどうか、そこが大切。今夜、私が鑑定しますから」。そう宣言した愛の部屋からあえぎ声が聞こえてきて……。