およそ120年前に書かれたと手書きの冊子がここにある。新聞記者が吉原の遊女から聞き書きしたような文章だが、元遊女自身の手記のように思われた。江戸時代末期、「手技の松島」と呼ばれた遊女の物語だ。11歳の時、口減らしのために村に回ってきた女衒に売られ、吉原に奉公するようになった女は、読み書きや礼儀のほかに、あそこの締まりがよくなる稽古など受けて日々を過ごしていく。遊女と客人が身体を重ねる姿をコッソリと見聞きし、男が喜ぶよがり方や体位を覚えた。15歳の時に初潮を迎え、いよいよ初めてお客を取る水揚げの日がやってくる。そして、40代の大店のご隠居に手ほどきを受け、遊女となる。茂助という大工に見初められて女の喜びを知ると、その茂助に手先の器用さを褒められ、「手技の松島」が誕生する……。