9人に満たない部員数、雑草だらけのグラウンドヤンチャな生徒たち、未曾有の災害……さまざまな困難を乗り越え、いかにして甲子園への切符を摑んだのか?本書では、様々な事情から「どん底」にいながら甲子園に出場した6校を取材した。どの学校も野球を心から愛する情熱を持った指導者が着任、指導することで選手たちと化学反応を起こしている。おかやま山陽は、「本気になれない選手」の意識を変えるために、人間性重視の選手募集に方針を変更し、下関国際は、一人一人の選手と徹底的に向き合う指導で、決して突き放すことをしなかった。霞ヶ浦は、最後の一勝を勝ち取れない指導者が葛藤を続け、折尾愛真は、1球のボールも失くさない「心の教育」に重点をおいた。クラーク記念国際は、通信制高校の厚い壁を選手と乗り越え、石巻工業は、東日本大震災の絶望から、希望をもたらしてくれた「野球への恩返し」をしたいと考えている。勝てないことで、何度も何度も立ち上がれないほど絶望し、環境の壁に立ち止まり苦しんだ彼らは、どのようにその苦境から脱し、選手たちを成長させたのか。野球を通して変わる選手、保護者、そして地域などのつながりを「どん底」から描く。 (はじめにより)【構成】◎私立おかやま山陽高校(岡山県)~異色な指導で新入部員3人からの大躍進~「技術のある子」のスカウトをやめた時に転機が訪れた。勝てない野球部を異色の経歴の指導者とスタッフが懸命に指導。10年間で、甲子園出場、プロ野球選手輩出、部員100名を達成した苦闘の歴史。◎私立下関国際高校(山口県)~廃部危機に追い込まれた野球部の下克上~ 部員の不祥事よって崖っぷちに立たされた野球部の監督に就任。部員1人の時期も諦めることなく選手と向き合い、自分と向き合い続けた熱血指導者は、「弱者が強者に勝つ」をスローガンに戦う。◎私立霞ヶ浦高校(茨城県)~9回の絶望の末に勝ち取った甲子園、その先にある未来~アウト1つ、あと1球、夢の舞台まで数センチのところにいながら、いつも勝利を逃してしまう。立ち上がれないほどの絶望を味わいながらも、自問自答を繰り返し這い上がってきた監督とチームの物語。◎私立折尾愛真高校(福岡県)~選手9人・ボール6球・グラウンドなしからのスタート~女子校から共学高になった翌年創部した野球部は、全てない・ない尽くし。 グラウンドも手作りして、チームの一体感が奇跡を起こす。産みの苦しみから栄光を勝ち取った野球部が次に繋げるバトンとは。◎私立クラーク記念国際高校(北海道)~通信制高校の創部3年目の奇跡~通信制の世間のイメージを覆す創部3年目の甲子園出場。選手が集まらない、知名度がない、通信制という特殊な環境の中、かつて駒大岩見沢を率いた名将は、どのようにこの苦境を切り拓いていったのか。◎県立石巻工業高校(宮城県)~大震災が残したもの、甲子園が教えてくれたもの~東日本大震災から8年。2012年に21世紀枠でセンバツに出場してから7年が経った。心に秘めるのは、あの時心を奮い立たせてくれた「野球への恩返し」。監督も選手も野球の底力を信じて進む。