あらすじ留学体験に取材した『倫敦塔』,日露戦争にまつわる怪談『趣味の遺伝』,アーサー王時代の物語『幻影の盾』など七つの短篇.同時期の『猫』と全く異質なこれらの作品の世界はユーモアや諷刺の裏側にひそむ漱石の「低音部」であり,やがてそれは『それから』以後の彼の全作品に拡大されてゆく. (解説 江藤淳・注 石井和夫)