あらすじ取材のために訪れた向島は玉の井の私娼窟で小説家大江匡はお雪という女に出会い,やがて足繁く通うようになる.物語はこうして、ぼく東陋巷を舞台につゆ明けから秋の彼岸までの季節の移り変りとともに美しくも,哀しく展開してゆく.昭和十二年,荷風(一八七九‐一九五九)五十八歳の作.木村荘八の挿絵が興趣をそえる. (解説 竹盛天雄)