この本は、30年以上サメの研究を続けた男性の自伝的エッセイです。著者の手島氏は、急性骨髄性白血病のため、2020年2月4日に亡くなりました。ちょうど著者校正が終わった段階で、あとの作業は、次男の信洋さんが引き継いでくださいました。
人生が残り少ないことを覚悟し、これまでやってきたことを書きのこしたいという思いで綴られた魂の1冊ですが、文章のタッチは明るく、サメについての専門的な内容もわかりやすく書かれています。サメは対外受精ではなく交尾をするとか、サメの中にはサメの形をした赤ちゃんを産む種類もいるとか、魚なのに魚っぽくないサメの世界は、非常に興味深いものです。著者は本の中で、ホシザメの進化に関するある仮説をとなえ、何千年か後に解明されるだろうと予言しています。小さな本の中に、ロマンが詰まっているのです。