20世紀の音楽史への深い造詣をもとにしながら、
謎をはらんだタイムトラベル・ストーリーの中に、
架空の音楽やミュージシャンたちの日常をリアルに描きこんでいく。
SF? ファンタジー? 音楽小説? ジャンルを軽やかに超えながら、
静かな感動を呼ぶラストまで一気に読ませる上質のエンタテインメント!
────行方不明になった伯母の家で、カズは祖父の遺品達を発見する。
古いスライド映写機を点けると、カズは近未来の地下鉄車内に飛んでいた。
しかも、ヘッドフォンで音楽を聞いている女性の身体の中に。
目の前の光景は本当の未来なのか?
好奇心に駆られたカズはタイムスリップを繰り返していく。
伯母の教え子だったヴァイオリン奏者のリキは親友に励まされながら、
自分自身の音楽を生み出そうとしていた。
ドイツからやってきた伝説のロック・ミュージシャン、ジーモン、
彼の祖父が遺したナチス時代のリボン・マイク、
伯母が愛したベヒシュタインのピアノ、京都の老技師──
数十年の時を超える因縁が人々を結びつける。
そして、生れ落ちる一枚のアルバム……