道具としての詩。
プランナーである著者が、仕事の中で書いた「仕事詩」、
父親として書いた「子育て詩」、亡き友人のために書いた「追悼詩」。
コピーのようでそうでもなく、自己表現でもない、
何かのための「道具としての詩」を集めた詩集。
本文より
予 感
予感をデザインしよう
それは未来の予行演習
わくわくするもののあるほうへ
まだ見ぬ誰かと門をくぐること
そのときめき
その匂い
予感をデザインしよう
それは街の操縦訓練
新しい季節の魔法に人が華やぐ
それをあなたが仕組むこと
その誘惑
その匂い
予感をデザインしよう
それは心の反応検査
階段をかけのぼるうれしさを
指差確認するような朝のひと言
その確かさ
その匂い
詩 人
すぐに書ける
まねでもいいじゃない
通り過ぎる言葉の
袖口をちょっと引っ張ればいいのさ
かどで待ち伏せしてたら
うしろから肩をたたかれるよ
怖い言葉たちに
そしたら道をあけてやりなさい
あふれるように
ことばが躍り出て
風景は変わる
詩人は
はじめてのおつかいから
帰ってこなかった子だ
ネ オ テ ニ ー
全体と部分
その
スペクトラム
全体のない部分
は全体
声のない舌
目のない光
言葉のない意味
部分が
完成する
星のように
おとなのないこども
雑踏の時間が
素通りしていく
まちぼうけのこども