個々の国における諸政権の栄枯盛衰がどうであろうと(それらはしょせん歴史のあぶくに過ぎない)、世界資本主義は確実に危機と行き詰まりの様相を深刻化させている。世界的に経済的格差はますます拡大し、自然環境は致命的な水準にまで悪化し、労働力と天然資源は無制限に搾取され浪費されつづけている。……とどまるところを知らない環境悪化は、人類がますます資本主義と両立しえなくなっていることをはっきりと示している。
こうした状況の中で、資本主義の運動法則とその諸限界を明らかにした『資本論』と、世界で初めて資本主義的世界秩序に本格的に挑戦してそれを部分的に突破したロシア十月革命の偉大な経験は、今日ますます重要な意味を持つようになっている。一部の「マルクス主義者」は、一方で依然としてマルクスを称揚しつつも、十月革命とその後の社会主義建設の経験を単なる「負の歴史」や「逸脱」として抹消しようとしているが、これほど非マルクス主義的な態度もないだろう。われわれは「もう一つの世界」を実現するための教訓を両者から学ぶことができるし、学ばなければならない。本書がその一助となれば幸いである。(本書「序文」より)