本書は、作家兼臨床家の神谷美恵子が、V.ウルフの病蹟学的研究で、自らやり残したと述べている作品研究の領域に光を当てて行なった、心の回復過程についての研究である。
『創作と癒し』はそこから名づけられている。また、その主題「闇の核心を求めて」には、心の闇に照らし出されるものとは一体何なのかという、ウルフが探求してやまなかった問題に、主にフォーカシング指向心理療法における“フェルトセンス”の解明を通して迫るという意図が込められている。
本書は、C.ロジャーズのパーソンセンタード・アプローチからE.U.ジェンドリンのフォーカシング指向心理療法、または、体験過程療法論の観点からウルフの心の闇に光を当て、文学と心理学の接点から臨んだ新しい方法論からの質的研究であり、さらにそこから導き出された“創作と癒し”の世界を「発展研究 創作体験を中心に」としてまとめている。