あらすじ昭和13年、広島文理科大学を辞して紀州和歌山の山村紀見村に帰郷した岡潔は、多変数解析関数論の曠野の開拓に数学の将来を託し、秋霜烈日の研究生活に身心を投じた。芭蕉の連句に沈潜し、道元の『正法眼蔵』に親しみ、無名女流歌人の歌に共鳴し、蛍狩りを楽しみながら日々を送る岡。岡にとって抽象的な論理も計算も数学の本体ではなく、数学の泉はいつも情緒にあった。第2巻は絶頂期から、第一エッセイ集『春宵十話』の結実、文化勲章受章、逝去にいたるまでの人生行路を鮮明に描写する。天才数学者の評伝、ここに完結。