古代地中海の国々が、アテナイ陣営とスパルタ陣営にわかれ、四半世紀にわたる激闘を繰り広げたペロポネソス戦争。野望や恐怖が人びとの運命を翻弄し、諸国の力がせめぎあうなかで、様々な政治戦略が生まれ、模索されていった。のちの時代に資するようにとトゥキュディデスが克明につづった英雄たちの名演説、諸国間の交渉の現場、大合戦の模様、そして病と困窮に倒れる民の姿は、古代ギリシア世界の全貌を活き活きと伝えるのみならず、いまなお国際政治学の教科書としても参照されている。両陣営を困窮へと陥れて幕を閉じるあの大戦争は、後世に何をもたらしたのか――。その核心に迫る傑作。