嫁さんは、死んでもまだこの世にうろついているんだよ――大正時代末期、大阪船場。画家の壮一郎は、妻・倭子の死を受け入れられずにいた。未練から巫女に降霊を頼んだがうまくいかず、「奥さんは普通の霊とは違う」と警告を受ける。巫女の懸念は現実となり、壮一郎のもとに倭子が現われるが、その声や気配は歪なものであった。倭子の霊について探る壮一郎は、顔のない存在「エリマキ」と出会う。エリマキは死を自覚していない霊を喰って生きていると言い、倭子の霊を狙うが、大勢の“何か”に阻まれてしまう。壮一郎とエリマキは怪現象の謎を追ううち、忌まわしい事実に直面する――。家に、死んだはずの妻がいる。この世に留めるのは、未練か、呪いか。選考委員満場一致、大絶賛!第43回横溝正史ミステリ&ホラー大賞 史上初の三冠受賞作!