税理士として私はこれまで、20年以上にわたってたくさんの社長とお会いしてきました。そうした社長の悩みでもっとも切実なのは、「どうしたら資金繰りが楽になるか?」です。資金繰りを少しでも楽にするためお手伝いし1、2年経って伺うとまた同じような状態に戻ってしまっています。中小企業の経営者の方には、自社の経営について相談できる相手が意外にいません。銀行は自行の利益が最優先ですし、経営コンサルタントを頼むにはそれなりのお金がかかります。ですから、クライアント会社の数字を毎月見ている税理士が、経営に関する助言をできたほうが良いと考え、私は行動に移したのです。●中小企業にぴったりの理論●利益倍増のため、4つの戦略を考え、振り返る本書でご紹介するのは、これまでのクライアント企業にアドバイスし、実際に利益を倍増させてきた内容です。しかもタイトルの通り10人前後の中小企業がターゲットとなっています。「10人」という数字には、意味があります。社員数が30人規模になると、社長は現場に立たず経営のことを集中して考える時間が生まれます。しかし、10人前後の会社では、社長は頭も体もフルに使わなくてはなりません。社長が頭を使うべきは、会社の実力を端的に示す「経常利益」がきちんと上がるように会社の方向性を決めることです。1人当たり経常利益を業界の倍にするために考えるべきは、経営戦略です。本書では、「何を」「どこで」「誰に」「どう売るか」の4つに絞っています。実際、この4つがピタリとマッチすれば、驚くほど会社の利益がアップします。資金も人材も少ない中小企業は、経営戦略を常に考えていく必要があります。そしてその戦略が正しかったかどうかを振り返り、先に生かすことも同じくらい大切です。本書が、考え、振り返る習慣づくりのきっかけになれば幸いです。■目次第1章 社員10人の会社が業績を良くするための心構え第2章 業績を良くするために守ってもらいたいこと第3章 まずは最大要因「何を」から考える第4章 次に「どこで」「誰に」「どう売るか」を決める第5章 事例でみる 中小企業の経営戦略第6章 日々の勉強の継続が実力アップには不可欠■著者 曲渕博史曲渕税理士事務所(東京中央区銀座)所長1960年長野県生まれ、1994年税理士登録、1995年独立。これまで22年間で約400社の経営指導を手掛ける。