手紙を詰めた壜を海原に投じるとき、書き手は「誰かは知り得ないが、どこかにいるあなた」へ届くと信じている。自分が名宛人でなくても自分宛のように受け取れる言葉が、この世界には確かに存在している。時空を隔てた「あなた」とわたしの関係――。
ナンシー、ツェラン、ベケット、リクール、デリダ、石原吉郎、青柳瑞穂、宇佐見りん、会津八一、ベンヤミン、石沢麻依……。思想と文学を結び、書かれた言葉を紡いでフランス現代思想の気鋭が贈る、傑作散文集。
目次
1.「あなた」を待ちながら
2.庭付きの言葉
3.岸辺のアーカイヴ
4.私にとっての赤
5.一人の幅で迎えられる言葉
6.記憶と醗酵
7.断片と耳
8.誇張せよ、つねに
9.あてこまない言葉
10.「あなた」とともに