『貝がらと海の音』『ピアノの音』『せきれい』『庭のつるばら』、1995年から1998年に発表された単行本4冊を初出順に収録。
「題材はご自由ですという有難いお話があったとき、私は夫婦の晩年を書きたいと思った」
(『ピアノの音』あとがきより)、70歳代に入った庄野はいわゆる「晩年の連作」と呼ばれる一連の作品を書き始める。山の上に暮らす夫婦の日常を描いた作品を、毎年1月から12月まで(一部の例外を除いて)、12回にわたって雑誌に連載し、翌年に単行本化するスタイルの作品群を『貝がらと海の音』から『ワシントンのうた』まで全12タイトルを、10年以上続けていくことになる。
「晩年の連作」第一弾にあたる『貝がらと海の音』は、1995年1月から12月に「新潮45」に連載し、翌96年4月に単行本化され、続く『ピアノの音』は1996年1月から翌97年1月まで「群像」に、『せきれい』は1997年1月から12月に「文學界」に、『庭のつるばら』は1998年1月から12月まで「新潮」に、それぞれ連載され、のち単行本化された。
解題は監修を務める日本文学研究者・上坪裕介氏が担当。付録として「貝がらと海の音」「ピアノの音」「せきれい」「庭のつるばら」の各連載第1回 生原稿冒頭部分ほかを収録する。
※この作品は一部カラーが含まれます。