米国滞在を綴った『ガンビア滞在記』、新潮社文学賞受賞作「静物」等、1957年から1960年に発表された14編を初出順に収録した一巻。
ロックフェラー財団の「フェローシップ」で 1957年8月から1年間、庄野夫妻はオハイオ州ガンビアに滞在、ケニオン大学の客員とて学び、様々な人々と交友しながら、アメリカ各地を旅行する。『ガンビア滞在記』はその日々を綴ったもので、庄野は後に「自分の文学作品は『ガンビア滞在記』に含まれる」と語るほど、転機となった「ガンビア体験」だった。
また「静物」は、構想1年半、生みの苦しみの中から生まれた「壊れた家庭の幸福を再建する物語」として、1960年11月に第7回新潮社文学賞を受賞した名作である。
ほか単行本『静物』収録の「相客」「五人の男」「イタリア風」「蟹」「なめこ採り」「二人の友」「ケリーズ島」に「南部の旅」「父母の国」「話し方研究会」「ニュー・イングランドびいき」「静かな町」を収録する。
解題は監修を務める日本文学研究者・上坪裕介氏が担当。
付録としてガンビア滞在時の庄野自筆のスケッチブック等を収録する。