不在によって存在を語り、黙することによって饒舌に語るジネディーヌ・ヤジッド・ジダンの底知れない「内面世界」ジダンの言葉は、いつも少し足りていない。だからこそ私たちはジダンに向けて、彼の言葉の余白に向けて、言葉を紡いできた。足りない何かに届きたいと思ってきたのだ。それが本書である。――「はじめに~ジダニスト宣言」より【構成】はじめに~ジダニスト宣言第一章 家族の肖像アグムンから/ムルド・フェラウン『貧者の息子』/一九五三年、フランスへ/パリでの生活/サン=ドニ、そしてスタッド・ド・フランスの歴史/脱出/暗い日々/結婚/ラ・カステラーヌ/マルセイユの都市計画/ラップの描くカステラーヌ/ジネディーヌ誕生/「ベルベル語」とカビリーの言葉の間で/ジネディーヌとサッカーのこと/ジャン・ヴァローのこと/ペゴマのエリノー家での一年/プロヴァンス青年寮/ディヴィジョン・アン、デビュー/ベルナール・タピのOM/ボルドーへ/フランス代表の初得点/長男エンゾ誕生/アルジェリアの社会情勢/一九九六年、EUROイングランド大会/ユヴェントスへ/「デルピッポ」とジダン/フランス・ワールドカップ/決勝トーナメントへ/準々決勝、イタリア戦/準決勝、クロアチア戦/決勝、ブラジル戦/『レキップ』紙のこと/ジダンへの敬意、ノエル・ル・グラエの失言/「一九九八年」の総括/ジダンの言葉/「英雄」は生き続ける/EURO2000のフランス代表のフォーメーション/ユヴェントスでの最後の日々/ドーピング問題の長い影/サン=ドニの悲劇まで第一章注第二章 フランス・カビリー・アルジェリア二〇〇一年一〇月六日/試合経過/二〇年目の視点/研究対象として/一九七五年の試合、地中海競技大会決勝/一九五八年、FLNのチーム/ラシッド・メクルーフィ/ムスタファ・ジトゥニ/チュニスへ/チームの誕生と「世界旅行」/ド・ゴール将軍の言説/アジアへの遠征/一九六〇年/フランスの核実験/決着/ジダンとの連続性/独立のドリブラーたちとその表象1/独立のドリブラーたちとその表象2/レアル・マドリード/歴史的な左足ボレーシュート/二〇〇二年、日韓ワールドカップの惨敗/ロナウド、レアルに加入する/クロード・マケレレ/二〇〇三―〇四シーズン/ロタンの告発/EURO2004/フランス代表からの引退/レイモン・ドメネクとは誰か/マケレレの立場/ジダンのスピリチュアリティ?/マムリ「鬼たち」/代表復帰/エメ・セゼールとの邂逅第二章注第三章 ヘッドバットの解釈学引退会見/二〇〇六年五月二日、レアルでの最後の試合/ドイツ・ワールドカップへ/最後のワールドカップ、グループリーグ/最後のワールドカップ、決勝トーナメント/準々決勝、ブラジルとの試合/イタリアとの決勝/前半六分、パネンカ/九〇分/延長戦/ヘッドバットをめぐる言説/メディア論的アプローチ~アイルランド・スコットランド・イングランドの場合/フランス民族学の立場から/オリジン論/マルセイユ性の発露/ジダンの天才が「溶かす」/神話学の視点/社会学者が見たヘッドバット/ジダンのなかの女性性/文学的に応答する/イスラム学者はどう見たか/教育者たちはヘッドバットをどう見たか/映画『ジダン 神が愛した男』/現役引退直後/カビリーの「大統領」/カビリーの二人の歌手/イディールとマトゥブ・ルネス/イディールとジダン/ジダンとマトゥブ、JSカビリー/もう一つのワールドカップ/ジダン理論を文学へ応用する/ナディヤの噂第三章注第四章 監督として指導者への困難な道/カリム・ベンゼマ論/芸術作品のようなチーム/二〇一七年、CL決勝/自身が語る「監督」/CL三連覇/ジダンの犯した「七つの罪」/「依怙贔屓」と頑迷さ/電撃辞任・電撃解任/監督復帰まで/ヴァンサン・デュリュックのジダン「監督」論/木村浩嗣との対話/監督としての成功要因/「足を入れろ」の静かな怒り/ジダンの「贔屓」について/辞め方、去り方のうまさ第四章注おわりに~未来のジダン参考文献ジネディーヌ・ジダン全試合出場記録ジネディーヌ・ジダン全監督記録