スカンジナビア屈指の圧倒的な筆勢気鋭作家が贈る珠玉の北欧ミステリ一九八八年十一月、二十三歳のバーグマンはゴミ袋につめこまれたクリスティアンヌの亡骸を発見する。顔は美しいままだったが、身体は原形をとどめていなかった。無慈悲な報告を聞いた母親のエリザベス・トーステンセンの悲しみは深く、何度も「わたしのせい」と繰り返していた……。回想を重ねるうち、エリザベスとは事件より以前に出会っていたことをバーグマンは思い出す。彼女はバーグマンの母親が勤めていた精神病院に入院していた。バーグマンは若く美しかったころのエリザベスと邂逅していたのだ。その少し前からバーグマンの身辺では異変が起きていた。ラスクの元同僚に話を聞いたころから、自宅に侵入者の気配を感じるようになり、ほどなくして母親の写真が盗まれたこのだ。そしてある日、差出人不明の手紙が届く。そこには「地獄が口を開けている」と書かれていた。何者かの警告か? 解けない謎を抱えたままラスクに接見したバーグマンは、彼の口からクリスティアンヌが禁断の愛に溺れて殺されたと示唆される。やはり犯人は別にいるのか――。過去と現在の事件が絡み合い、混迷を極める中、新たな犯人像が浮かび上がる。