あらすじ武州秋津藩十二万石の元藩士江守市之進はかつて藩政内紛事件に捲き込まれ、名を時蔵と改め江戸にて貸本屋笛吹堂を商う。故郷を捨てざるを得なかった時蔵の胸中に去来する望郷の念は強い。父母は健在か、姉はどうしているのか? 春──桜は咲き誇り、人々がさんざめく時、一通の文が時蔵に届けられ、それが二十一年前の悪夢をよみがえらせる事となった……。