心理学の研究をしている私にとって、『鬼滅の刃』のメインキャラクターである炭治郎、伊之助、善逸の3人のキャラクター造形には目を見張るものがありました。この3人だけで、対人関係のストレスの対処方法、自分の内側から湧き起こってくる自暴自棄の思いに勝つための「心の操作」の方法を全て網羅しているのです。心理学の一分野である「交流分析」では、ストレスなどから自分の心を守るために、「努力せよ」「他人を喜ばせよ」「急げ」「完全であれ」「強くあれ」という5つの「心の盾(シールド)」を持つと説きます。炭治郎、善逸、伊之助らは、この5つの心の盾を3人で分けるようにそれぞれ持ち合わせています。自らをストレスから守りながら、他者とどのように向き合うのか。私は、この点を分析して、『鬼滅の刃』の読者に伝えたいと考えました。メインキャラクターの3人以外にも、『鬼滅の刃』にはストレスに打ち勝ち、対人関係に役立つ「強さ」を持つキャラクターがいます。彼らの対人関係の心理も分析しているので、きっと多くの方のお役に立てるはずです。本書が多くの人の手にいきわたり、人間関係を解決する座右の書となることを願っています。