あらすじベルギーのブリュージュは中世の昔から、ハンザ同盟の金融の中心地として、また英国やスカンジナヴィア諸国との交易の要衝として繁栄し、さらにはブルゴーニュ公らのすぐれた文芸保護者を得て、美術工芸の分野でも旺盛な活動を示した都市だ。だが、その輝きは、歴史の闇の彼方に没し去ってしまった。ローデンバックは過去の一時期に確かに燃え立ったその熱さを、哀惜と共感をこめて追想し、はっきりとその終焉を宣言する。ノスタルジーの極致を示し、日本でも上田敏、荷風以来、多くの文人に愛された名編。