『エマ』というのは、だれもが気軽に手にとってみたくなる題名です。そして事実、ジェーン・オースティンというのは、実に気軽に楽しんでもらえる作家なのです。そのうえ彼女ほど、読者の好き勝手な解釈を許してくれる作品を書いた作家もいません。通俗的な恋愛小説ととってくださってかまいません。または、18世紀後半、あるいは19世紀前半の風俗習慣が生き生きと、手に取るように伝わってくる作品と解釈することもできます……要は、多種多様の要素を含みながら、けっして押しつけがましいところがなく、ひたすら読者を楽しませてくれる。それが彼女の作品の素晴らしさなのです。(訳者の言葉より)