普通の社会生活に適応できないハリー・ハラーは精神的な分裂状態に悩まされている。自分のなかの「荒野の狼」は苦悩と不幸の源になり、阿片製剤入りの鎮痛剤をあおり、ときおりどうしようもない死の誘惑に駆られる。脱出口を見つけられないこうした彼の前にヘルミーネという女性があらわれる。そしてその世話でダンスと愛技の名手マリーア、サックス吹きのパブロに出会う。めくるめく異世界との接触は仮装舞踏会でクライマックスに達する…そこには「魔法劇場」が待っていた。壮年のヘッセが描いたファンタジー。70年代、ヒッピーたちのバイブルともなった。