あらすじ「八、遊びに行こうか」平次もたまにはこんなこともありました。お小遣いはふんだんにあり、差し迫っての仕事はなし、隅田川を渡って、堀切あたりの菖蒲《しょうぶ》でも眺め、ヨシキリの声でも聴いて、田園趣味にでも浸ろうかと思ったのでした。相棒には八五郎があり、帰りに一杯きこし召せば、それで文句を言う八五郎ではありません。「そいつはありがたいが、親分、大変なことが始まったんで」八五郎はまだ朝飯前と見えて、寝ぼけた顔を二階から差しのぞかせました。「お前の大変が来ないので、江戸は淋しくてかなわないよ、どうしたんだ八」…平次とガラッ八との絶妙なコンビが織りなす江戸の風物詩。