「約束して。私のことは跡形もなく忘れる、と」三〇代の久島は、情報も欲望もそつなく処理する「血も涙もない的確な現代人」として日常を生きている。だが、学生時代に手紙を交わしつづけた望未だけが、人生唯一の愛として、いまだ心を離れない。望未は手紙の始まりで必ず「最愛の」と呼びかけながらも、常に「私のことは忘れて」と願い、何度も久島の前から姿を消そうとした。今その願いを叶えるべく、久島は自分のためだけの文章を書き始める。愛する人が誰よりも遠い存在になったとき、あらたに言葉が生まれ、もうひとつの物語が始まる。「永遠の恋人」を描いてきた著者が最高純度で贈る、超越的恋愛小説!