人工知能(AI)にまつわる倫理リスクとしてよく挙げられるのは、AIの訓練に使用されるデータ自体に現実世界の差別が織り込まれているために、バイアスのかかった出力結果が生成されてしまうことである。しかし、これ以外にも、企業が組織的かつ網羅的に取り組むべきリスクは数多く存在し、それらの倫理リスクに慎重に対処しなければ、評判、規制、金融、法律に関する重大な脅威となりかねない。AIは大規模運用を想定して構築されるため、何らかの問題が生じると、関係者全員に影響が及ぶからだ。本書では、倫理リスクに対処する戦略の一つとして「AI倫理委員会」に焦点を当て、そこに倫理学者、弁護士、テクノロジスト、ビジネスストラテジスト、バイアススカウト(偏見発見者)を参加させることがなぜ重要かを論じる。
*『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(2022年11月号)』に掲載された記事を電子書籍化したものです。