アジアでは、「民主主義」という政治体制が現代もなかなか定着し切れない状況が続いている。どの国も表向きは「民主主義」を唱えつつも、実態としては軍による専制や一党独裁、制限された民主主義など、国民の自由や尊厳を重視しない政治体制となっている国が多い。 アジアでそのような状況が続くのはなぜなのか。その問いに対して、王朝国家の時代からの影響も踏まえて検討した意欲的な一冊。 西洋の政治思想史をひとつの比較対象としつつ、王朝国家の時代、植民地国家の時代、現代国家の時代と、3つの便宜的時代区分を設定して、アジア全体としてどのような大きな変化が起こってきたのか、各時代の特徴的な思想言説を参照しながら検討する。 欧米とは違う、アジア独自のファクターを描き出し、今私たちがどのような問題と向き合う必要があるのかを明らかにする。