スラムに住む子どもたちが笑顔で生き、かたや充実した社会保障に守られながら希望をもてない人たちがいる――。「日本は世界第三の貧困大国」とされている。一時は「派遣村」に代表される貧困問題がニュースとなり、生活保護をめぐる議論が断続的に世間をにぎわしている。たしかに私たちの将来の見通しはなかなか立たない。だが、物質的に恵まれている日本で「貧しさ」を実感している人は、はたしてどれだけいるだろうか? 『絶対貧困』『遺体』などのベストセラーで知られるノンフィクション作家・石井光太は、これまで世界の最底辺を取材しつづけてきた。その経験をもとに、途上国の貧困を「絶対貧困」、先進国の貧困を「相対貧困」と定義し、あやふやな「貧困」の本質に迫ったのが本書である。住居、労働、結婚、食事といった生活の隅々で、両者の実態を比較する。 【目次より】●第1章 住居――コミュニティー化するスラム、孤立化する生活保護世帯 ●第2章 路上生活――家族と暮らす路上生活者、切り離されるホームレス ●第3章 教育――話し合う術をもたない社会、貧しさを自覚させられる社会 ●第4章 労働――危険だが希望のある生活、保障はあるが希望のない生活 ●第5章 結婚――子どもによって救われるか、破滅するか ●第6章 犯罪――生きるための必要悪か、刑務所で人間らしく暮らすか ●第7章 食事――階層化された食物、アルコールへの依存 ●第8章 病と死――コミュニティーによる弔い、行政による埋葬 世界とくらべて、日本の貧困にはどのような特徴があるのか。たしかに日本では、貧困が社会のなかに溶け込んでいるため個々の事例としてしかとらえられず、大きな渦となって見えにくい。だが、それは裏を返せば、私たちのすぐ隣に貧困が潜み、だれもがそのふちに片足をかけていることを意味している。対岸の火事ではないはずだ。そしてこのことは、社会学のような学問や理論では決して見えてこない。現場を隈なく歩きつづけ、世界と比較するからこそ知りえる光景が、目の前に広がっていた。日本全体で約2,000万人、6人に1人が相対貧困であるという現実が厳然とある。働けど働けど、なぜか幸せを実感できない私たち日本人。その答えを本書で解き明かそう。