日本書記は、神武天皇が「天(あま)の下を、ひとつの宇(いえ)としよう」(八紘一宇)と宣言して大和の国を建国した、と伝えている。ところが、今日の日本史の教科書に神武天皇はいっさい登場しない。それに代わって卑弥呼なる、なんとも怪しげな霊能力者が古代史の主役となっている。果たして本当に日本書紀が伝えることは、単なる神話、伝承なのであろうか? 「春秋2倍暦」という仮説がある。これは<古来、この国では1年に2歳、齢を数えていた>というものだ。この仮説を適用して日本書記の年代を見直すと、日本書記と現在の考古学は一挙に整合性を取り戻す。そこに見えてくるのは大和の国の創建時、天皇と国民(おおみたから)が共に歩む姿だ。それは、世界に例を見ない奇跡のストーリーで、この大和の国の格調高き歴史に卑弥呼がかかわる余地など当然ない。本書は、「新皇国史観」を確立し、混迷する建国史観を再建するために書かれた意欲作だ。