自分たちとは関係のない遠い国や地域の出来事だと思っていた民族や宗教をめぐる紛争が、アメリカの同時多発テロ事件以来、一気に切実で身近な問題となって迫ってきた。たとえ、その紛争が一国家内の諸民族・諸部族のいさかいや異なる宗派間の小競り合いにすぎないとしても、現代の世界情勢はその影響をストレートにこうむる仕組みになっているのである。その意味からいえば、わたしたちはもはや民族・宗教紛争を他人事として傍観しているわけにはいかない。現状を正確に把握しておくことが今後ますます求められるだろう。本書は、今世界中で起こっている民族や宗教をめぐる紛争を地域ごとにまとめたものである。たんに現状の分析にとどまることなく、きっかけとなった歴史的事情や社会的背景にも可能な限り紙面を割いている。「なぜ対立するのか」という素朴な疑問がすっきりと解消されるはずである。新聞やニュースを見るときの一助としていただきたい。