「あの人はいい顔してる」と言うことがあります。とても魅力的な表現ながら、どういう顔がいい顔なのかわかりにくい面もあります。そこで本書では、写真家荒木経惟さんが、いい顔についてあらゆる角度から論じ、いい顔とは何か、どうすればいい顔の持ち主になれるのかについて、徹底的に語りつくします。アラーキーの呼び名でおなじみの荒木経惟さんは、2010年5月で70歳を迎えます。また、写真家生活も50余年になります。09年に自身のからだに見つかったガンと闘いながらも、過激な問題作を次々と発表されています。一方で、荒木さんが思い入れをもって撮影してきたのは、“顔”です。自身の写真家生活は「顔に始まり顔に終わる」と言い切り、いまなお、『日本人ノ顔』シリーズなどを通し、顔を撮り続けています。顔をテーマにしながら荒木さんのお話は、女性観、男性観、人間観、死生観にまで広がり、この写真家の人間への興味、思索の深さには唸る思いがいたします。政治、社会、文化、芸能、スポーツ……、あらゆる世界で「いい顔」が少なくなったいま、多くの方に読まれ、この国に「いい顔」があふれることを願う一冊です。