今号の特集テーマは「贈る」。SNSやオンライン上でメッセージのやりとりがいつでもどこでも気軽にできるようになり、対面でのやりとりの機会が少なくなっている現在。日常的なコミュニケーションの環境が変化するなかで、何かを「贈る」ということは、相手に気持ちやメッセージを伝えるための普遍的な手段のひとつです。それは祝福や感謝を伝える特別な場面のプレゼントに限らず、ちょっとした差し入れ、友人にお気に入りのプレイリストを共有する、といったことも「贈る」行為として捉えられるかもしれません。個人間に限らず、「贈る」ことは様々なかたちで社会のつながりを生んでいます。慣習や行事に倣った贈り物や挨拶状によるコミュニティの形成や、寄贈・寄付やアーカイブといった活動での文化の引き継ぎ、財産の共有や譲渡もまた「贈る」という行為から広がっています。個人間のやりとりで築かれる関係性やそのメッセージ、社会のつながりをつくる文化や取り組みがもたらす豊かさを紐解きながら、「贈る」ことの意味を探っていきます。